クナッパーツブッシュには2つの顔があると思う。
ひとつは、ワーグナーやブルックナーのような重厚長大な音楽と格闘する、古き時代の巨匠の顔。
もうひとつは「舞踏への勧誘」や「金と銀」などの小品を、朴訥でありながら小粋に演奏する好々爺の顔。
その2面性は、まさしく彼の「顔」にあるとみた。
北陸の荒く厳しい海岸にごろごろしている岩のような顔。そしてその上に乗っかっている、キューピーちゃんのようにクルっとカールされた美しい金の前髪。
顔がワーグナー、ブルックナー。
そして、前髪のところが「金と銀」。
…。
ブルックナー 交響曲第8番
ハンス・クナッパーツブッシュ指揮ベルリン・フィル
(1951.8.1 ARPCD 0036)今日聴いたのは、ベルリン・フィルとのライヴ盤。
1951年のものなので、ミュンヘンとのスタジオ録音よりも十年以上まえの演奏ということになる。
基本的な解釈は、スタジオ録音と同じ路線だと思う。
デッドな録音のせいもあるけれど、ミュンヘン・フィルとの演奏は、とても無骨に響き渡る。
だが、音楽の端々で炸裂するラディカルな緩急の変化は、まさに19世紀生まれの指揮者のものであり、おおいにケレン味を感じる演奏だ。
とはいえ、この大げさなやり方が絶妙にハマッているので、有無を言わせない説得力があるのも事実である。
そういう意味では、ベルリンを振ったこちらのライヴ盤のほうがさらに抑揚が大きく、メリハリが強くて熱気に溢れている。
第3楽章でのベルリン・フィルの弦のパワーは、鳥肌が立つほどすさまじいものがある。終楽章で、金管楽器が崩壊寸前になっているのはご愛嬌。
こういう音楽をつきつけられると、ブルックナーの演奏において、クナッパーツブッシュを最高の指揮者のひとりであると考えざるを得ない。
と、崩壊一歩手前の私は安物の赤ワインを舐めながら、そんなことを思うのであった。
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