ブルックナー 交響曲全集 カラヤン指揮ベルリン・フィルブルックナーの第8の終楽章冒頭ほど血湧き肉踊る音楽は少ないだろう。
私はこの音楽を、カラヤンの演奏で初めて聴いたとき、ぶったまげた。あまりに驚いたので、もったいないと思い、家族ひとりひとりに聴かせ回ったものだ。皆、無反応だったが。
それから約30年。久しぶりにこの演奏を聴いてみる。
第1楽章は、ホルンの朗々とした響きが印象的。重厚でつややか。総じて、管楽器がすばらしい名技を披露する。
第2楽章も、管楽器の冴え渡る技量(なんといってもクラリネット!)、そして白光りする弦楽器群のパワーが圧倒的だ。中間部のハープが登場するところなど、部分部分に即物的なところもある。
第3楽章は、テンポはゆっくりしているものの、ヴァイオリンが鋭角的に切り込んでくるので、ややせっかちな感じを受けるところもある。でもやはり全体的に輝かしく、こよなく甘美な音響世界が繰り広げられている。全奏のときでも音が塊にならず、副声部のフルートやクラリネットが透き通って聞こえてくるのがステキだ。そしてそれは決して不自然ではなく、しっかり流れに溶け込んでいる。クライマックスはいささか唐突におとずれる感があるものの、迫力満点、むろんシンバルとトライアングルは絶叫している。
そして終楽章。冒頭のティンパニは強烈だが、リズムがよいので浮いた感じはしない。この楽章も、テンポがいい。ゆったりとした流れに、音符がぎっしりとつまっている。
カラヤンのこの演奏は、ワビとかサビ、あるいは行間を読む、といった風情のあるものではなく、むしろ行にふんだんの文字が埋め尽くされたような饒舌なものだ。実務的といえば実務的。でも、誠実な演奏。
ラストは金管の咆哮すさまじいが、ヴァントやジュリーニよりもむしろ上品に仕上がっていると感じた。
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