ヘルシャーのヴァイオリン、ベトヒャーのチェロ、マリナー指揮シュトゥットガルト放送交響楽団でブラームスの「二重協奏曲」を聴く(1980年7月、シュトゥットガルト、南ドイツ放送局での録音)。
この曲、昔は苦手だった。
重苦しいし、メロディーもいまひとつ冴えない気がしたから。
だからしばらくこの曲を聴いてこなかったが、ある日たまたまフリッチャイのCDを購入し(目的はカップリングのベートーヴェンの三重協奏曲だった)、聴いてみたら良かった。
演奏がいいということが原因でもあろうが、嗜好が変わったことのほうがむしろ大きいのかも。ブラームスの渋さを愛好するようになったのは、それから。やがて、ピアノ独奏曲や室内楽曲も聴くようになった。
さて、マリナーのこの演奏。重すぎず軽すぎない適度な重量感が心地よい演奏。
ふたりの独奏者もいい。ヘルシャーのヴァイオリンはとりたてて美音というわけではないものの、オケとチェロの音にじっくり耳を傾けて、バランスのよい演奏をしている。木目調の響きがいい。
ベトヒャーのチェロも同じく、音量のバランスに気を使っている。通常、チェロはヴァイオリンよりも音が小さいが、ここでは対等に鳴っている。録音の匙加減もあるかもしれないが、それにしては自然だ。
マリナーの指揮は力みがない。肩の力を抜いて深呼吸するようなおおらかさがある。中庸なテンポをとりつつ、キッチリとソロに合わせている。
2楽章の6分10秒あたりからじわじわと盛り上がるところなど聴くと、3人の男+オケのメンバーが作曲家に大きな敬意を抱いているのがわかる。
ウルフ・ヘルシャー(ヴァイオリン)
ヴォルフガング・ベトヒャー(チェロ)
パースのビッグムーン。
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