ブラームス ヴィオラソナタ第1番 トムラー(Va) アンスネス(Pf)本田直之の「レバレッジ勉強法」を読む。
著者は、ハワイでコンサル会社を営む。
ハワイは一度だけ行ったことがあるけれど、まさに楽園。暖かいし、海は綺麗、食べ物もおいしい。ただ、いるだけで心地いい。
ここにいたら、仕事どころか勉強もする気にはなれないと思ったものだ。観光地を周っていたからかもしれないが、本屋を一軒も見かけなかったことにもおおいに納得した。あそこでは本を読む気にはとてもならない。お日様がステキすぎるから。
夜はうまい魚も出てくるし。
…なんてバカンスの雰囲気は、なぜかこの本には皆無で、著者の視点はなかなかシビア。
ことに、勉強のアセットアロケーションの項はなるほどと思う。
『貯金は「天引き」がいちばん良いとされるように、勉強時間も天引きし、あらかじめ強制的に確保することにしましょう』。
ただし、あまり多すぎず、毎日コツコツと溜めていくのが肝要だとか。
ビジネスパーソンは、短い時間でいかに効率よく勉強するかが大原則。
一日24時間から、睡眠時間や食事の時間をさしおいて、まずは勉強時間を差っぴく。で、残った時間を生活の時間にあてると。残った時間をプライベートなどにまわしてもじゅうぶんに時間はあるとのこと。
睡眠時間をまず差っぴくわたしとしては、これでもけっこう難しいものがあるが、まずは手始めに一日数十分から、始められるかどうか。
ブラームスの2曲のヴィオラ・ソナタは、ともにクラリネット・ソナタを自ら編曲したものだ。
音域が似ていることに加え、音色がクラリネットに近いこともあったからだろう。
これを聴くと、最初からヴィオラのために書かれた曲じゃないかと思ってしまう。違和感はない。
ブラームスは晩年に集中してクラリネットのための室内楽曲を書いている。当時、マイニンゲンの官廷楽団のクラリネット奏者、リヒャルト・ミュールフェルトの影響が強いと言われている。
クラリネットのための三重奏曲、五重奏曲を書いて、最後の室内楽曲である、クラリネットのためのソナタを2曲書き上げた。これは死の前年になるから、ブラームスの最晩年の作品といっていいだろう。
若い頃から渋い作品を書いてきたブラームスだから、最晩年のものとなると、これは激しく渋いといえる。渋さが基調となっているけれども、時折、ヒステリックに爆発するところなんかは、若い頃と芸風は基本的に変わらない。若書きといわれたら納得してしまうかもしれない音楽である。枯れた味わいが強いとはいえ、元気の良さもじゅうぶんにある。まだまだ現役という感じ。
演奏は、アンスネスの柔らかい響きがまず素晴らしい。角が丸みを帯びた、打鍵を感じさせないマイルドなタッチが、たっぷりと豊満。空間のすみずみまでほんわかとした弦の響きが充満していて、そのなかに身を任せているひとときの贅沢なこと。ヴィオラを堅実に支えながら、じわじわやんわりと自己主張をしている。
トムラーのヴィオラは、陰影を際立たせた演奏。細めの線でもって濃淡をはっきりとつけた雄弁な弾きぶりだけど、けっしてでしゃばらない弾きぶりだ。主役でありながら、響きはどことなく控えめであり、ピアノと対等になるように合わせているように聴こえる。
これはどちらかといえばアンスネスの個性が強いのかもしれないし、曲そのものがピアノ寄りであるのかもしれない。
1991年8月、オスロでの録音。
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