アラウ(Pf) クーベリック指揮バイエルン放送交響楽団ロマン・ポランスキー監督の「オリバー・ツイスト」を観る。19世紀のロンドンを模した美術と衣装、それにセピア色の映像が雰囲気たっぷり。孤児のオリバーが、ひょんなことから泥棒一家の仲間になるわけだけど、泥棒の一味がけっこうほのぼのとしていて(かわいい女の子もいるし)で、逃げるのがなんだかもったいないと思った。
泥棒の親玉がベン・キングズレーだったことを後から知る。メイクが濃いから全然わからなかった。
アラウの数あるブラームスのなかから、今週聴いたのはクーべリックとの白熱のライヴ。
オーケストラは冒頭からのっぴきならない気合いが入っており、これはさすがに、目隠しされてもセッション録音とは思いにくいだろう。アンサンブルは完全に整っているとは言い難く、ときおり喘ぐように混濁したり、つんのめるようにオーボエが悲鳴をあげたりする。それでもなお、捨てがたい魅力があるのは、一気呵成といってもいい推進力と、緻密に計算されたデリケートなサポートがあるから。とりわけ、2楽章の弱音器をつけた玄妙な弦の響きと、締めくくりのフルートの弱音は神秘的なまでに巧妙。
アラウは素晴らしく多彩な音を聴かせる。5月の太陽のように輝かしい高音から南国の海のように深い低音まで、まばゆいくらいに色彩的。ひとつひとつの音がばらばらにほぐれているから、空間の広がりが大きく感じる。終楽章のラストの場面などは、たったふたつの手で奏でる音楽としては信じられないくらいに豊満。
1964年4月24日、ミュンヘン、ヘラクレスザールでのライヴ録音。
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