ブラームス ヴァイオリン協奏曲 オイストラフ(Vn) クレンペラー指揮フランス国立放送管ブラームスのヴァイオリン協奏曲の聴きどころはたくさんある。
そのなかで、一番気に入っているのは、ヴァイオリン登場の部分。長い序奏ののちに、空気を切り裂くようにソロが登場するところは、背筋がゾッとするくらい緊張感に満ちた名シーンだ。
この立ち回りがうまく決まるかどうかで、その後の是非が決まるといってもいい。
オイストラフのヴァイオリンは、重い音をつややかに響かせながらも切れ味の鋭さを持ち合わせた、重厚にして繊細な立ち回りを見せる。
この太刀さばきで、名演奏は保証されたようなもの。
その後も、どこから叩いても揺るぎのない安定したヴァイオリン捌きを披露する。
どこがどういいのかという説明は難しい。全てがいい。ひとつひとつの音は、考え抜かれた末に編み出されたに違いないが、それを感じさせない自然なテンポと、潤いに満ちている。
カデンツァはヨアヒム版。
クレンペラーのオケもいい。冷静沈着な棒さばきで、ヴァイオリンにぴったりついて離れない。
残響が多めの録音の効果もあって、弦楽器群の響きは、厚みがあってひろがりが大きい。
アダージョ楽章のオーボエは、フランスのオケだからか、軽やかな味わいがある。
堅実で派手な動きはないけれども、内なる熱狂を秘めたサポート役と言える。この役柄はなかなかおいしい。
1960年、パリのサル・ワグラムでの録音。
ときにオイストラフ51歳。ソリストとして脂の乗り切った頃の演奏の記録。
オイストラフのステレオのブラームスと言えば、セルのサポートによるものがある。こちらは、約10年後のものだが、録音・演奏ともにかなり似通った演奏。まあ、どちらもすばらしい。
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