ダヴィット・オイストラフのヴァイオリン、コンヴィチュニー指揮ドレスデン・シュターツカペレの演奏で、ブラームスのヴァイオリン協奏曲を聴く。
オイストラフのブラームスの協奏曲で有名なのは、クレンペラー/フランス国立放送局管弦楽団とやったもの、それとセル/クリーヴランド管弦楽団と演奏したものだ。ステレオであり音質もなかなかいいし、ヴァイオリンも文句のつけようがない。録音年代も指揮者も違うのに、ふたつの演奏が酷似しているところは、1960年を過ぎて既にオイストラフがこの曲に対するスタイルを確立したためであろう。
コンヴィチュニーとのものは、1954年の録音。ここでのオイストラフは、直線的だ。太くて伸びのある音色は前二者と変わらないが、歌い回しに抑揚が少なく、切っ先が鋭い。だから、スケールの大きさはさほど感じない反面、生真面目さと緊張感が前面に出ている。
終楽章のクライマックスのところの、押し出しの強さはここでも聴くことができる。とても、強い音だ。
コンヴィチュニーの指揮は、ヴァイオリニストにぴったりと寄り添っている。かっちりとした音であり、力が漲っている。2楽章のオーボエは細いが芯がしっかりしている。美しい。
モノラル録音であるが、音質に不満はない。
1954年2月、ベルリンでの録音。
森その3。
「ぶらあぼ」4月号に掲載されました!PR