チャイコフスキー「交響曲第5番」 シャイー指揮ウイーン・フィル島田荘司の「大根奇聞」を読む。
ときは江戸時代。天明の大飢饉の鹿児島は、桜島の大噴火もあり作物は全滅。住民は次々に餓死していった。
そんななか、桜島大根だけが実をつけたが、お上の監視があり手を出すことができなかった。生き倒れの旅人(後に武勇伝を残すことになる)を救うために桜島大根を盗んだ老婆は、なぜ打ち首にならなかったのか?
ミステリーは最後、御手洗の手であっさりと解き明かされるが、これは途中で読めたナ。謎解きよりも、「浮浪雲」を思い起こす厚い人情が印象的。
録音当時27歳だったシャイーのデビュー盤。
勢い重視の熱いチャイコフスキー。
後にレコード芸術のインタビューでライナー・キュッヘルがこの録音を指して、あれはチャイコフスキーではない、というようなことを言っていた。確かに、シャイーは演奏会ではこのオケをあまり振っていないようだから、団員の評判はよくなかったのかもしれない。デッカとの契約だから、録音は(しぶしぶ?)実施したのだろう。そういうところはショルティの立場に似ているようだ。
それはともかく、この演奏のどこがチャイコフスキーではないのか、ちょっと理解に苦しむ。勢い余って、ときおり前につんのめりそうになるところがあるが、ああいうところを問題視しているのだろうか。だとすればチャイコフスキー云々というより、若気の至りといったほうが近いのじゃないだろうか。団員からみると、やりにくかったのかな。
いずれにしても、このノリのよさ、他の録音ではちょっと聴いたことがない。ことに4楽章の推進力はすばらしい。ユニークで面白い演奏だと思う。
1980年12月、ウイーンでの録音。
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