サー・チャールズ・マッケラス指揮ロンドン交響楽団/「くるみ割り人形」全曲村上春樹がカフカ賞を受賞した。このカフカ賞の存在を、不勉強なので今回初めて知った。どのくらい影響力があるのか知らないが、マスコミ嫌いの村上が記者会見をしたくらいなので、著名なものなのだろう。
最近の村上の作風は、私には難解であり、初期のものに比べるととっつきにくい作品が多いのだが、この10月にチェコ語に翻訳されたという「海辺のカフカ」もなかなか手ごわい作品だった。
この物語では、「ホシノちゃん」という登場人物がいる。元ヤンキーのトラック運転手で、いつも中日ドラゴンズの帽子を被っているという設定なのだが、村上作品らしからぬ浪花節的なキャラクターで、この物語のなかで非常に重要な役柄になっている。村上作品では数少ない、お気に入りの人物である。
さて、チャイコフスキー。
私は「くるみ割り人形」を、というよりは、クラシック音楽の楽しさというものを、オーマンディ指揮フィラデルフィア管弦楽団のハイライト版から覚えたものである。この曲をとっかかりとして、様々な音楽にめぐり合うことができた。チャイコフスキーのこの曲は、私の趣味の師匠のようなものである。当時のレコードは今の大事に持っているが、いったい何度聴いたかわからない。
このつらくて拙いジンセイに、大きな楽しみをもたらせてくれたものだ。
その後、ほかの指揮者によって「くるみ割り人形」を聴いてきたし、今でも時折思い出したように聴いているが、どうせ聴くならば全曲がいい。組曲やハイライトでは必ず割愛されている「雪のワルツ」を始めとして、どれひとつとして落とせないほど魅力的な曲ばかりだ。どうしてオーマンディは全曲を残してくれなかったのだろう。演奏そのものの魅力であれば、文句のつけようがない。きらびやかな音響といいメランコリックな雰囲気といい、これがチャイコフスキーの管弦楽曲、というべき演奏である。初心者はもちろんのこと、愛好家でも充分聴くに堪える(吉田秀和風)。
全曲版で何をとるかといえば、ドラティ、プレヴィンの新旧、スラットキン、そしてマッケラスということになる。
マッケラスの指揮はケレン味がなく、やや早いテンポで上品にこの曲を料理している。
ロンドン饗は派手なところはなくて、重心の重い響きを基調に渋い音楽を聴かせてくれるが、ときおり、きらめくような音色をちりばめており、チャイコフスキーのこの夢の音楽に花を添えている。
テラークの録音は冴え渡っている。兵士の銃弾の音に、本物の大砲が使われているが、とてもリアルで腹にこたえる音響である。
この盤は映画のサントラ盤ということであるが、不勉強にして、映画の存在は知らない。
フィナーレが終わった後に、ピアノと女声の音楽が入っている。これは「スペードの女王」からのダフニスとクロエの二重唱で、なんだかモーツァルトのオペラみたいな味がある。★音楽blogランキング!★にほんブログ村 クラシックブログ無料メルマガ『究極の娯楽 -古典音楽の毒と薬-』 読者登録フォーム
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プレヴィンの旧盤はいいですよね。録音は少々古くなりましたが、ふわっと靄がかかったような幻想的な雰囲気がなんともいえません。クリスマスの夜の夢をみているようです。捨てがたい盤です。
それに比べてマッケラスは明快なサウンドを目指したもので、大人の風格のある演奏といえよう(宇野功芳風)…。
オーマンディのチャイコフスキーのバレエ曲。ずいぶん昔に魅せられましたが、今聴いても色あせません。その後も、オーマンディの録音をいくつか聴きましたが、これ以上に魅力的なものには出会えておりません。
「冬のワルツ」…。「雪のワルツ」が正しいです。「冬のソナタ」とごっちゃになってしまったか(笑)。韓流のファンではないのですが。訂正します。ご指摘ありがとうございます。
児童もしくは女声合唱団による、あの曲です。全曲盤でしか聴くことがありませんが、いい曲です。