チャイコフスキー ピアノ協奏曲第2番 ギレリス(Pf) マゼール指揮ニュー・フィルハーモニア管田崎真也の「サービスの極意」を読む。
1995年に世界最優秀ソムリエコンクールで日本人初の優勝をして一躍有名になった著者。
ワインの専門家としての活動だけではなく、居酒屋を開いたり、焼酎の本を出したりと多彩な活動をしている。
この本を読むと、固定観念にとらわれない彼の発想の柔軟さがよくわかる。
ワインを常温と冷蔵庫で冷やしたものとの2種類を用意して客に選択させる居酒屋をみておおいに納得したり、ワイン用のブドウを栽培している農家のオヤジが白ワインのつまみとして塩せんべいを食べているのをみて感動したり。
この経験を生かさない手はない。
そこで著者は、白ワインに餃子はどうだろうと思案する。
『ギョウザの食べ方を工夫してみたらどうだろう。醤油と酢をやめてラー油と塩だけならどうか。マヨネーズとレモンに変えてはどうか。ハーブをたっぷりと添えてドレッシングをかけたらどうか。さまざまに試みれば、必ず「これなら!」という組み合わせにたどりつくものだ』
面白そう、かつおいしそう。
チャイコフスキーのピアノ協奏曲といえば、1番がやけに有名だが、2番もそう悪くない、いや1番に劣るものじゃないとつねづね思っていた。
以前よく聴いたのは、ジョン・リルのピアノとワルター・ウェラー指揮のもの。エアチェックしたテープをずいぶんよく聴いたもの。バランスのとれた中庸な演奏で、アルバートホール独特の長い残響がほんわかとした雰囲気を出していたのだった。
久しぶりに2番を聴いてみたが、やはりいい。
完成度では1番に及ばない。特に1楽章は、ときおりおもちゃ箱をとっちらかしたような乱雑さを感じる。
場面の入れ替わりが激しいのはいいとしても、そのつなぎ目がいささか強引なので流れがよろしくないのだ。ピアノが静かな旋律を奏でていていたかと思えば、突如、黒白鳥が跳躍するような。
そういった面があるものの、メロディーそのものの魅力と華やかな管弦楽の魅力には攻し難い。
あたかも3大バレエのような幻想味たっぷりで華麗な音楽が、ピアノとオーケストラでもってめくるめく繰り広げられる。
2、3楽章は、1番と比べて遜色ない。2楽章のヴァイオリンとチェロで奏でられる哀愁、そして3楽章のパンチの効いた冒頭メロディーは、チャイコフスキーを聴く醍醐味にあふれている。
ギレリスのピアノは、弱い音から強いタッチまで、冬の朝の空みたいに澄んだ痛快なもの。音に迷いなし、という感じ。
3楽章はややテンポを抑えて、強靭で雄弁なピアノの音響世界を繰り広げている。
マゼールの指揮はきっちりとメリハリのついたもので、キレがいい。各楽器の鳴りっぷりが気持ちよい。万全。
というわけで、この曲はもっと演奏されてしかるべきかと。
ポゴレリッチやアンスネス、シフなんかで聴いてみたいものである。
1972年10月、ロンドンでの録音。
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