カート・ヴォネガット(金原瑞人訳)による「国のない男」を読みました。
「善が悪に勝てないこともない。ただ、そのためには天使がマフィアなみに組織化される必要がある」。
これは、20世紀後半を代表するSF作家による遺作となったエッセイ。当時のブッシュ政権や堕落する企業・メディア・宗教団体を痛烈に批判する。
そうはいっても、人間を信じたい。また信じられる存在であることを希求する。
彼は言う「人にやさしくしろ」。簡単なようで簡単なことではないけれど、畢竟、これが世界を明るく照らすための秘訣なのかもしれません。
コルトーのピアノで、ショパンのピアノ・ソナタ2番を聴きました(1933年の録音)。
コルトーはわりと好きなピアニスト。シューマンやショパンをときどき取り出します。現代のスーパーなピアノ弾きと比べたらテクニックはだいぶ怪しいけれど、それを補って余りある味わいがあるように思います。
この録音、年代を考慮すると音がいい。自然な残響が取り入れられているし、透明感すらある。観賞には申し分ない。
コルトーも好調。遅い部分は大鐘のようにどっしりとタメをきかせ、速いところは隼のように空気を斬りさいています。微妙に変化するテンポとスピードにわざとらしさはなく、上等なシャンパンのような芳香が立ち上っています。
また、ここではテクニックの不備はあまり散見されません。
いい演奏だと思います。
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