ジェイン・オースティン(小山太一訳)の「自負と偏見」を読む。
これは、イングランド・アッパー階級の5人姉妹家族の婚活生活を描いた作品。
この作品は1796年に書かれている。ドストエフスキーやディケンズよりも古い。なのに、新しい。まるで向田邦子か平岩弓枝の小説を読んでいるかのようだ。
アッパー階級とは、貴族の一歩手前の身分であり、基本的に仕事をしなくても生活できる人種のこと。この小説の主人公が住む家族は、とても裕福、とまではいかないものの、主人は日がな本を読んで生活できる。そのあたりはまった共感し得ないが、特に女性の登場人物が実に生き生きと描かれていて、興味をそそられた。
ことに、主人公のエリザベスは向こう気が強く、どんな金持ち相手にもひるまない気骨をもっていて、彼女が最後に幸せを迎える場面のときは、読んでいるこちらもホンワカした気分になった。
同じ時代の日本では、とうてい書き得なかった作品である。
レーゼルのピアノ、ゲヴァントハウス四重奏団の演奏で、シューマンのピアノ五重奏曲を聴く。
これは、とても端正で几帳面な演奏。レーゼルの気品高いピアノは存在感抜群だが、全体のリードはおそらくカール・ズスケがとっているのだろうと思わされる。
というのは、スッキリとしたテンポと切れ味の爽快さが、同じゲヴァントハウス四重奏団のメンデルスゾーン「八重奏曲」に似ているからだ。あの輝かしい演奏は、一度聴いたら忘れない。天空を舞うようなめくるめく音世界! メンデルスゾーンとシューマンとはまったくスタイルが異なるが、ここでもその切れ味は生きている。
下手をすればもったりとしそうなこの曲を、なんと生気溢れた解釈でもって対峙していることか。ここには、シューマンの「あいまいさ」や「気だるさ」といったキーワードをいったん保留にして、真っ白な状態で楽譜を読みぬいた努力が窺える。その結果、いま生まれたてのような、まるまるとして清潔なシューマンがここに浮かび上がった。
レーゼルのニュートラルなピアノがここで生きているし、ゲヴァントハウスの面々も、脂身のない筋肉質な弦を聴かせる。
こういう健康的なシューマンも悪くない。
ペーター・レーゼル(ピアノ)
ゲヴァントハウス弦楽四重奏団
カール・ズスケ(ヴァイオリン)
ギュルギョ・クレーナー(ヴァイオリン)
ディートマル・ハルマン(ヴィオラ)
ユルンヤーコブ・ティム(チェロ)
1983-84年、ドレスデン、ルカ教会での録音。
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