シューマン ピアノ独奏曲全集 デムス 平岩正樹の「こうして私は53歳で、また東大生になった」を読了。
著者は東大医学部卒の外科医で、卒業後に理一を受けなおしたことがあり、さらに熟年になった頃、今度は文三(文学部)を受ける決意をした。勉強をしたいという強い欲求を抑えられなくなったとのことである。
使った参考書は、百冊前後に及ぶ。
一度は落ちたものの、医者をやる傍らでZ会の通信講座を勉強し、再度の挑戦で見事合格。
受験勉強は、楽しくて仕方がなかったらしい。
東大に受かるだけでもじゅうぶんすごいことなのに、3回も受かるなんてねえ。世の中には、つくづく変わったヒトがいるものだ。
さて、引き続きデムスのシューマン。
勉強はキライだが、こうしたモノは継続できるのだ。
デムスの全集は、どちらかといえば標題性の強いものはいまひとつという感があるが、「森の情景」は冒頭から引き込まれた。
色褪せた石畳のようにくすんだ音色。華やかさのかけらもない朴訥な録音が、シブさに輪をかけているようだ。
デムスのピアノそのものも、鮮やかさとは無縁のようで、まだ見たことのないドイツの深い森とはこういうものかと夢想する。
全体的に速めのテンポで進んでゆく。このテンポと、淡白な弾きぶりが、幻想味を冗長しているのかもしれない。
特に変わったことはしていないのに、聴いたあと、じんわりと心に残る演奏である。
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