ウィルヘルム・ケンプのピアノで、シューマンの「謝肉祭」を聴きました(1971年3月、ハノーファー、ベートーヴェン・ザールでの録音)。
ケンプを最初に聴いたのは、40年近く前のことで、確かステレオのベートーヴェンの協奏曲。切れ味に乏しいと感じ、あまりいい印象を受けませんでした。少しあとに聴いたベートーヴェンのソナタもそう。
そんなことがあり、しばらく彼から遠ざかっていましたが、数年前にたまたまモノラル録音のベートーヴェンの後期ソナタを聴いて軽いショックを受けました。堅固なテンポと重厚なソノリティ、曲に対する深い畏敬。いままで聴いたものはなんだったのか? というよりも、自分の感じ方が変わったと解釈するほうが正確かもしれません。
この「謝肉祭」は彼が75,6歳のときに録音されています。セッションでありながら、テクニックは万全とは言い難い。でも、ひとつひとつの音符を慈しんでいる。タッチは真綿のように優しい。夢のような淡い霊感もある。愁いも湛えた仄めかし。思いつく限り、シューマンの音世界を十全に備えた演奏だと思います。
いままでこの曲を聴くのにミケランジェリ盤(DG)、ルイサダ盤をよく取り出していましたが、このケンプ盤も加わりそうです。
この4枚組ボックスは神保町のディスク・ユニオンで購入、他には主に「交響練習曲」、「クライスレリアーナ」、「幻想曲」、「フモレスケ」、「ソナタ2番」などが収録されています。
これから折をみて聴いていきます。
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