錦糸町楽天シネマズで、高畑勲監督の『かぐや姫の物語』を観る。
映像が斬新だ。和紙を思わせる導入部、全編を彩る水彩画のような淡い色彩感が鮮烈。
田舎の風景は、山も梅も桜もみょうがの花も、ほんのりとした優しい色。
都の情景は、ときおり原色を用いたくっきりとした色。
かくや姫は、今までのジブリ作品とはタイプの違う顔立ちで、これはこれで可愛らしい。楽しいことや悲しいことをひっくるめて生きることが、「穢れた地球」を愛する心。人間は生きるために生まれたというセリフが、ずっしりと重みをもって伝わる。
ラストは、泣いてしまった。
ブレンデルと仲間たちの演奏で、シューベルトのピアノ五重奏曲「鱒」を聴く。
この「鱒」は、ブレンデルにとっては2度目の録音。最初のクリーヴランド四重奏団との演奏を長らく愛聴してきたが、本演奏のほうが余裕を感じる。
ブレンデルのピアノはとてもゆったり。シューベルトを知り尽くしているとも言える彼が、適度に力を抜いた、とても柔らかなピアノを聴かせてくれる。
ソリスト達もいい。ツェートマイアーは雄弁にして繊細。ツィンマーマンは包み込むように中音を支える。ベルリン・フィルのふたりはバランスがいい。強すぎず弱すぎず、絶妙の塩梅。アンサンブルとして、ひとつひとつの楽器がいい具合にほぐれているので、音楽に素敵な膨らみが生まれている。
しっとりとした録音も最上。
アルフレッド・ブレンデル(ピアノ)
トーマス・ツェートマイアー(ヴァイオリン)
タベア・ツィンマーマン(ヴィオラ)
リヒャルト・ドゥベン(チェロ)
ペーター・リーゲルバウアー(コントラバス)
1994年9月、ドイツ、ノイマルクト、ライトシュターデルでの録音。
昔ながらの素敵な映画館。
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