シューベルト 八重奏曲 フィルハーモニア・アンサンブル・ベルリンエドワルド・ジェンコフスキー(Vn)
ライナー・ヴォルタース(Vn)
土屋邦雄(Va)
ネラ・ハンキンス(Vc)
アロイス・ポッシュ(Db)
エスコ・ライネ(Cb)
アロイス・ブラントホーファー(Cl)
ダニエーレ・ダミアーノ(Fg)
ノルベルト・ハウプトマン(Hr)
ライナー・ノーツの記述を読んで、一瞬、勘違いをした。
「この愛すべき八重奏曲は1824年、シューベルト27歳の早春に、ある貴族の注文を受けて作曲された」。
27歳といえば、まだ若い頃の作品であるな、と。
27歳といえば、まだ若いに相違ないが、この4年後に死ぬシューベルトにとっては、もう晩年といってもいい年齢なのであった。
私は、この時期がシューベルトの晩年だと知っているから、この明るい作品の中にも、常に悲痛さを掘り起こしてしまいがちだが、年齢を考慮すれば、まだ学生気分が抜けきらない年頃といってもいいくらいだ。
この八重奏曲は、作られた年齢を感じさせない。若いとか、老成とか、そういった形容詞は似つかわしくない。
生活感を全く感じさせない、透明な、生命の息吹に満ちている。
このアンサンブルは、ベルリン・フィルの現メンバーとOBとの連合軍。弦楽器のあたりの強さと恰幅のよさは、まさに小型ベルリン・フィルである。特にヴァイオリンが強く、全曲を通して支配している感じだ。
チェロとコントラバスは、ときどき強烈な自己主張をみせていて、あたかもベートーヴェンを思い起こすようないきがりぶりだ。
依頼主が吹くことをを想定したであろうクラリネットは、あまり派手な立ち回りはないが、要所要所にホンワカした味わいを出していて、とてもまろやかな仕上がり。
カラヤン時代のベルリン・フィルが、カラヤン以外の指揮者によって演奏したときのように、ありあまるパワーを抑制できず、ストレートに爆発させたような、そんな演奏である。
こういう演奏もありだろう。なにしろ、曲が良すぎるから。
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