エベーヌ弦楽四重奏団とカプソンのチェロで、シューベルトの弦楽五重奏曲を聴く(2015年9-10月、パリ、サル・コロンヌでの録音)。
これは、硬軟おりまぜた、才気煥発な演奏。
室内楽の「白鳥の歌」ともいうべきこの曲の、こんなに若々しくて伸びやかな演奏は、今まで聴いたことがないかもしれない。
荒削りなところはあるものの、それを補って余りある新鮮さがある。初春の若芽が、冷たく湿った大地を切り裂いて、清々しい空気を纏うかのよう。
1楽章は力強い。はち切れんばかりのエネルギーを、おしみなく発散させている。チェロの2人がゴツい音を出す。松脂が飛び散るのが見えるみたい。
第2主題は優しい肌触り。
2楽章では、呼吸の深いメロディーを、丁寧に抑揚をつけて歌わせている。ヴァイオリンとチェロとのピチカートが、生々しい。
長い。その長さがいとおしい。
3楽章は、豪壮。
そして、まるで黄泉の国を思わせるトリオでは、いたずらにシューベルトのデモーニッシュな側面を強調しようとせず、明瞭な音作りに徹している、ように感じる。
4楽章は、キレがあって、リズミカル。細やかな強弱の変化が、華やかな色づけになっている。
第2主題は、こってりと甘くしている。至福!
エベーヌ四重奏団
ピエール・コロンベ(Vn)
ガブリエル・ル・マガデュール(Vn)
マチュー・ヘルツォク(Va)
ラファエル・メルラン(Vc)
ゴーティエ・カプソン(Vc)
パースのビッグムーン。
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