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アンスネスのシューベルト「ピアノソナタ第17番」

2010.01.30 - シューベルト

sc

シューベルト「後期ピアノソナタ」 レイフ・オヴェ・アンスネス(Pf)


椎名誠の「ひとりガサゴソ飲む夜は……」を読む。
椎名といえば旅とサケ。本書はそのエキスだけを抽出した罪深い読み物。
熊本の馬刺しに焼酎、スコットランドの生牡蠣のウイスキーがけ、八丈島のクサヤに焼酎、韓国のチヂミにマッコロリ、川のキャンプの岩魚の骨酒、羅臼の赤ホヤと冷酒、浄土ヶ浜での風呂上がりの生ビール、そして新橋のガード下…。
たまらん。
こちらもそろそろ一杯。


アンスネスのシューベルトをかねがね聴いてみたかった。村上春樹が「意味がなければスイングはない」のなかでシューベルトのこの曲の聴き比べをしていて、アンスネスの演奏を近年の録音のなかでイチオシとしていたからだ。そのへんにころがっているような動機である。
新しい録音で、かつカーゾンやクリーンと並ぶような演奏とはいかなるものか。
聴いてみると、角のとれた柔らかい肌触りのピアノである。あたりのキツいところは皆無で、どこをとってもマイルド。ほんわかと包まれるように和む音である。
とてもいい音色だが、それはグールドやミケランジェリみたいに人を寄せ付けないような圧倒的な音ではない。変な言い方だが、常識の範囲内で美しい。しごくまっとうな、21世紀の正しい(?)ピアノである。
全体的にバランスのよい演奏であり、なかでは3、4楽章が際立っていいように思う。テンポの動きの柔軟さ、そしてときおり見せる控え目な装飾音のセンスが抜群。細部の彫刻がとてもデリケートであり端正であるうえに淡い霊感もそこはかとなく漂う。シューベルトの演奏ではこれが重要だ。それはなんぞやと言われると説明が難しい。理詰めではなく直線的に突き刺さってくる浮世離れした情感のようなもの。
明るくて伸びやかな、気持ちのよいシューベルトである。

2002年10月、ロンドン、アビーロード第一スタジオでの録音。

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Comment

無題 - rudolf2006

吉田さま お早うございます〜

椎名さんの本、美味しいものばかりですね、困ります、こういうのを読んでしまうと、食べたくなってしまいます、爆〜

シュベルトのピアノ・ソナタ、奥が深いですね、良い演奏も数多いですし〜。アンスネスの演奏、私も気になっているんですが、まだ未聴です、近いうちに聴いてみたいですね〜

ミ(`w´彡)
2010.01.31 Sun 08:47 URL [ Edit ]

Re:rudolf2006さん、こんにちは。 - 管理人:芳野達司

いつもコメントをありがとうございます。

椎名のエッセイに酒は欠かせませんが、この本のネタはホントに酒ばかりです。こういうものを読んでしまうと、とりあえず呑まなきゃ始まらんということで自分を納得させています。

アンスネスのピアノはよく考え込まれたデリケートなものではないかと感じます。微妙な強弱のつけかたやテンポのゆれにセンスを感じます。これはいい演奏です。
2010.01.31 16:14

無題 - リベラ33

椎名誠は面白いですね。一時そうとう読んだことがあります。エッセイはたぶんほとんど読んでいますよ。
氏の小説はエッセイに比べてもうひとつかな、と思っていたのですが、「アド・バード」という作品は面白かったです。長い作品ですが、また機会あったら読みたいものです。
2010.01.31 Sun 10:58 [ Edit ]

Re:リベラ33さん、こんにちは。 - 管理人:芳野達司

いつもコメントをありがとうございます。

食べ物のエッセイで、野菜のなかで誰が一番偉いかを決めるというものがあって、それが強烈に印象に残っています。野菜のトーナメント表には笑いました。たしか、キャベツや白菜を抑えてタマネギが優勝したかと。
椎名の小説はサラリーマンものを何冊か読みました。SFも定評があるようですね。
2010.01.31 16:22

無題 - sweetbrier

こんにちは。お久しぶりです。
アンスネスは、私の好きなピアニストです。グールドとはまた違った、柔らかな叙情が垣間見えるところが特に。

吉田さんが書いておられるの読んで、私の持っているそういう印象を書いてみたくなり、出てきました。

> 常識の範囲内で美しい。しごくまっとうな、21世紀の正しい(?)ピアノである

ソナタや協奏曲を構造的に把握できない私にも、メロディーとか和声とか、短いフレーズが内包する気分とかを、さくっと切り取って置いてくれるような演奏です。
2010.01.31 Sun 12:19 URL [ Edit ]

Re:sweetbrierさん、こんにちは。 - 管理人:芳野達司

お久しぶりでございます。

以前にアンスネスのことをsweetbrierさんが書かれていたので気になっておりました。シューベルトを聴いたところ、すごく繊細なピアノを弾く人ですね。
音の按配がじつに微妙で独特の広がりを感じます。

>ソナタや協奏曲を構造的に把握できない私にも、メロディーとか和声とか、短いフレーズが内包する気分とかを、さくっと切り取って置いてくれるような演奏です。

同感です。感覚的にも優れたものじゃないかと思います。
2010.01.31 16:29
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