ロンドン・ナッシュ・アンサンブルの演奏で、サン=サーンスの「七重奏曲」を聴く。
弦五部とピアノにトランペットを加えた編成は珍しく、他に知らない。この曲を委嘱したルモワーヌが、トランペットを含む室内楽という要望を出したそう。
曲は4楽章からなり、どの楽章もトランペットの活躍が目立たないわけにいかない。ピアノが主導し、弦楽器が基盤を支えるが、トランペットの出番になると、どうしても引き立つのである。「トランペット七重奏曲」と呼んだほうがとおりがいいような気もする。
吉田秀和はサン=サーンスのことを「通俗的」と言って蔑んでいた。通俗的のなにが悪いのか? という議論もあるのだが、サン=サーンスの室内楽はそれを超えていい。メロディーはわかりやすく適度に甘いし、各楽器の立ち回り方もうまいし、構成力も高い。彼はこの分野に大量の作品を残したそうだから、これから積極的に聴きたい。
ナッシュ・アンサンブルは1964年に結成された室内楽アンサンブルで、フルートのベネットやチェロのカンペンらが参加している。この演奏は、そのなかの選抜メンバー。テクニックに不満なし。
マーシャ・クレイフォード(ヴァイオリン)
ジェレミー・ウィリアムス(ヴァイオリン)
ロジャー・チェース(ヴィオラ)
クリストファー・ファン・カンペン(チェロ)
ロドニー・スラットフォード(コントラバス)
イアン・ブラウン(ピアノ)
ポール・アーチバルド(トランペット)
1988年、ピーターシャム、オール・セインツ教会での録音。
昼下がり。
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