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ボニーの「ダイヤモンド・イン・ザ・スノウ」

2007.04.18 - オムニバス

ボニー

北欧歌曲集 バーバラ・ボニー(Sop) アントニオ・パッパーノ(Pf)



先週末はかなりヒマだったのでビデオ三昧。日曜日に観たのが『笑いの大学』。星護監督、三谷幸喜の原作。
ひとつひとつのギャグはそれほど面白いとは思えないのだが、役所がばかばかしいセリフを大真面目に語るところになんとも言えないおかしさがある。「お肉のために命をかける」は忘れられないセリフになった。
借りてきたビデオの返却日は昨日までだったのに、あと2本も残っていて大慌てで観たのが次の映画。
『赤穂城断絶』、深作欣二監督。忠臣蔵を扱ったもので、萬屋錦之介が大石を演じている。浅野内匠頭を西郷輝彦、吉良上野介を金子信雄が演じるあたり、勧善懲悪の路線を脱するものではないが、討ち入りのシーンの立ち回りの迫力は、今まで観た忠臣蔵の中では随一。
『ターミナル』、スピルバーグ監督。観光旅行のため空港に降り立ったが、自国の革命のために入国も出国もできなくなり空港に住むはめになった男の話。キャサリン・ゼタ・ジョーンズが切ないほどにいい女を演じていてステキなのであった。


「ダイヤモンド・イン・ザ・スノウ」は、北欧の歌曲を集めたアルバム。グリーグ、シベリウス、ステンハンマル、アルヴェーン、ショーベルイという作曲家たちが登場する。
全部で26曲収録されているうち、私が聴いたことのあるものは、グリーグの『春』と『ソルヴェイグの歌』の2曲だけであった。
ルーネベリという詩人の『あいびきから戻った娘』には、奇しくもシベリウスとステンハンマルが音楽をつけている。

『娘があいびきから戻ってきたら
手が赤かったので母親は聞いた
「娘や、おまえの手はなぜ赤い」
娘がいうには「薔薇を摘んだら
棘が手に刺さってしまったの」
つぎにあいびきから戻ってくると
娘の唇は赤かった。母親は聞いた
「娘や、おまえの唇はなぜ赤い」
娘がいうには「木いちごを摘んだから
汁で唇が染まったの」
も一度あいびきから戻ったら
娘の頬は青白かった。母親は聞いた
「娘や、おまえの頬はなぜ青白い」
娘がいうには「お墓の用意をして、お母さん
私を埋めて、十字架を立ててね。
そして十字架には、これから言う言葉を刻んで」
「ある時娘は手を赤くして帰った。
それは恋人に握られたから。
ある時娘は唇を赤くして帰った。
それは恋人に触れられたから。
最後に娘は頬を青白くして帰った。
それは恋人の不実のため」』

赤頭巾ちゃんと水車小屋の娘を足して2で割ったような話である(?)。なんとも甘くて初々しい。
シベリウスの曲は、まるでR・シュトラウスの「献呈」のように華やかで激しい音楽になっている。作曲家がこの詩に感じた激情のようだ。一方、ステンハンマルの曲はゆっくりしたテンポの憂鬱な音楽である。浮き沈みのある内容を、一貫して悲劇的なものと捉えたように思える。
ひとつの詩に対しての捉え方、そして音楽のつくりかたがこうも違うものなのかとつくづく感じた。
ボニーの歌は、豊かなふくらみのある透明な声でもって、文字通り「ダイヤモンド」のように冴え渡っている。仄かな温かみがあるに加えて、不思議なボリューム感がある。
パッパーノのピアノは、伴奏に徹した職人的なものだと思った。
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