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C・クライバーのシューベルト「交響曲第8番"未完成"」

2007.06.23 - シューベルト
shubert

シューベルト 交響曲第3,「未完成」 C・クライバー指揮ウイーン・フィル


シューベルトの「未完成」といえば、題名だけは誰もが知る名曲中の名曲。レコード会社が企画するなんとかベスト100なんていうシリーズのカタログの筆頭が「運命」/「未完成」のコンビであることが多かった。今はそうでもないみたいだけど。
最初に買ったのは、フルトヴェングラーのコロンビア盤。A面には「未完成」のあとに「運命」の1楽章が入っていて、2楽章がB面から始まっていた。その次に入手したのはカラヤンの60年代のDG盤。見開きのジャケットが豪華で、本体よりもこっちのほうが高くつくような代物であった。友達がめぐんでくれたものだ。
「未完成」を好んで聴けるようになったのは、ここ10年くらいのことだ。それまではなにがいいのかわからなかった。地味な旋律がうだうだと続いていてダイナミックにかけると思っていたのだ。だから「運命」ばかり聴いていて、「未完成」のほうはほとんど針を通すことがなかったように思う。
で、あるときふと「未完成」に開眼した。ムラヴィンスキーかクライバーかのどちらかだったはず。
それは自分が「水車小屋の娘」や「冬の旅」などの歌曲集、即興曲やピアノソナタを面白いようになった後のこと。ある音楽を聴くためには、それなりの手順が必要なのだろうか。
この曲の3楽章を聴いたことがあるが、途中までしか書かれていないというハンディを補っても、最初の2楽章とのバランスが悪いと感じた。研究ということでは価値のある作業かもしれないが、聴き手にとってはふたつの楽章で充分であり完結されていると思う。というよりは、この曲ほど高度に完成された交響曲はそうそう見当たらない。「極度の緊張を持つ壮麗に組み立てられたソナタ形式の楽章」(アインシュタイン)という言葉を待つまでもなく、比類ない完成度がある。
さらにこの音楽の高さは、そういった構成面だけではなく、劇的なドラマ性にある。昇天するような錯覚を覚えさせられるメロディーが続くかと思えば、地獄のふちにたたされてうしろをポンを押されるのを待つ残酷さが顔をのぞかせたり、起伏が激しい。ただこれは指揮者によってほんとうにマチマチで、作曲家の悪魔的な側面を掘り下げることに成功したのが、ムラヴィンスキーとC・クライバーだと思う。この2つの演奏はこわいので、頻繁に聴くことはないのだが、たまに取り出すと、いろいろな意味でとても充実した体験をすることができる。あとケルテス盤も勢いがあってすばらしい。
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Comment

無題 - rudolf2006

吉田さま こんにちは
シュベルトは、最近、交響曲の番号が変えられたりしていますが、やはり「未完成」は8番の方が馴染みがありますよね。
この曲に「悪魔的な側面」があるとは、吉田さんのこの文章を読むまで、感じたこともありませんでした。どちらかというと「天国的」は雰囲気を持った曲だと、今まで思ってきました。聴いてきた演奏が、ヴァルター、オーマンディなどの演奏が多かったからかもしれません。
クライバー盤は、まだ聴いたことがありません。
今度聴くときには、意識しながら聴いてみようかなって思っています。

ミ(`w´彡)
2007.06.23 Sat 12:50 URL [ Edit ]

Re:rudolf2006さん、こんにちは。 - 管理人:芳野達司

コメントありがとうございます。
長年の慣れで、8番が未完成、9番がグレイトというほうがしっくりきますね。
特に「悪魔的な側面」を感じるのは、第1楽章の展開部(というのか?)で、ヴァイオリンの弱音のトリルからだんだんとクレッシェンドしていく部分です。クライバーの演奏では、弦楽器の音に殺気がこめられていて、聴いていてつらくなるくらい緊迫感があります。ムラヴィンスキーでは、第2楽章の短調のところがこわいです。
2007.06.23 13:33

無題 - sweetbrier

吉田さん、こんばんは。
吉田さんの文章を通して、C.クライバー指揮の「未完成」がとても魅力的な曲に感じられました。なんだかこわいくらい、深いものを感じました。私は、きちんと聴いたことがないのです。手もとにも見あたりません。

マンスリー企画その他みなさんのエントリーを拝読して、一度は聴いてみたい音盤がどんどん増えています。でも音楽を聴くのは「それなりの手順で」ですね。焦らず好きなものを楽しんでいきます。

私はシューベルトのピアノ即興曲集が好きです。メロディーや和音の組立が美しく、あっという間に終わってしまう気がします。反面、ピアノソナタはどうしてだか終わりまで聴き通せません。まだまだこれからです。
2007.06.23 Sat 23:12 URL [ Edit ]

Re:sweetbrierさん、こんばんは。 - 管理人:芳野達司

コメントありがとうございます。
「未完成」には実に多くの録音があり、その全てを聴いたわけではないのですが、このC・クライバーとムラヴィンスキー、そしてケルテスの演奏は、コワくて深い音楽だと思いました。
マンスリー企画のみなさんのエントリーからは、いろいろ得られるものがあります。まだ聴いていない曲が多いことを実感します。楽しみがあるということでもありますね。
シューベルトのピアノソナタは退屈です。どうにもこうにも。でも、ときどきひかるものを感じて、ハマっています。
2007.06.24 01:02

無題 - Niklaus Vogel

吉田さん、こんばんは! 明朝の準備をしつつ、ネットで遊んでいます(爆)。
私の予想、当たりました!今回は「勝手にxxの日」の御参加もありませんでしたので、「ここでクライバーだろう」と云う読みも当たりました(笑)。
シューベルト愛好家の吉田さんがこの曲の魅力に開眼したのがここ10年くらいと云うのは以外ですが、私も同様です(笑)。
ここ最近は薄いロマンと暗い情念が交錯するテンシュテットの来日ライブ録音(1984年4月11日、東京簡易保険ホール)を好んで聞いています。
「ダーク」… 確か吉田さんが実演をお聞きになられたものと思います。以前、このブルックナーのこととサインをテンシュテットに頂戴した際のことを記されたエントリーを思い出しています。(←1週間前に考えたコメントです(爆)。)
今夜の第9番のエントリーに関しましては、私は本場物よりも米国オーケストラの録音を好んでいます(笑)。
睡魔が限界にきました… 失礼致しますm(_ _)m
2007.06.24 Sun 03:28 URL [ Edit ]

Re:Niklaus Vogelさん、こんにちは。 - 管理人:芳野達司

コメントありがとうございます。
遅くまでご準備ご苦労様です。そんななか、拙ブログをごらん頂きうれしいです。
指揮者まで当たっちゃいましたか(笑)。ムラヴィンスキーは6番で登場したので、ここはクライバーにしました。
「シューベルト愛好家」というほど聴いているわけでもありませんが、これから少しずつ聴いていきたい作曲家です。
「ダーク」、覚えてらっしゃいらしたか。あの頃は「未完成」に興味がなかったので覚えていません。CDを聴いて復讐、いや復習をしてみたいものです。
第9は、これまた有名な録音を取り上げます。オケが重なりますが、ここは勘弁いただくと…。
ありがとうございました。
2007.06.24 09:34

無題 - nozart1889

吉田さん、こんばんは。
TBを有り難うございました。
C・クライバーの「未完成」はいつ聴いても新鮮で強靱な精神を感じさせてくれる名演です。
もう発売から28年も経過しましたが、今も全く色あせない、素晴らし演奏ですね。
2007.09.05 Wed 22:12 URL [ Edit ]

Re:mozart1889さん、こんにちは。 - 管理人:芳野達司

コメントありがとうございます。

「未完成」交響曲は、暗くて激情的な演奏がすきなので、この盤はケルテスやムラヴィンスキーとともに気に入っています。音も良く、満足です。
彼の海賊盤は少なくない数ありますが、「未完成」は見当たりませんでした。
2007.09.06 12:38
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