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バルビローリのマーラー交響曲第9番

2007.01.15 - マーラー
バルビローリ

バルビローリ指揮ベルリン・フィル/マーラー交響曲第9番


バルビローリのこの盤は、1963年に彼がベルリン・フィルに客演したときの演奏が素晴らしかったことを受けて、団員の強い要望があって録音が実現したものである。
その話を聞いていた私は、どんなトンデモナイ演奏なのだろうと、心を躍らせたものである。

この録音は1964年のもの。その後、マーラーの交響曲はまるで竹の子のように次々と録音されていって、「第九」だけをとってみても、ジュリーニ、バーンスタイン、カラヤン、アバド、テンシュテット、レヴァインなどの名演が林立している。新譜が出れば、評論家が入れ替わり立ち代りに絶賛するという状態であった。
たしかにそれらの演奏はいい。それぞれに思い入れ深く、切実に美しくマーラーを演じている。
私がこのバルビローリ盤を聴いたのは、ジュリーニやバーンスタインを聴いた後のことであるが、実に素朴だと感じた。あまり派手さがないので、しばらくの間、この演奏のよさがわからなかった。

「勝手にベルリン・フィルの日」

ここ数年のことだろう、この渋さがわかってきたのは。私の人生も折り返し地点を通過したことで、男の渋さを身につけつつあるのだろうか。
このバルビローリのマーラーは聴けば聴くほど味がでてくる、テンポはCD1枚に収まる程度なので、比較的速いといえる。
この速さがこの演奏の特性を表しているように思う。どんな曲でもそうだが、テンポを遅くすれば、深いように聴こえる。が、バルビローリはそれをしないで、テンポの速さの中で、弦楽器の立体感を明確にし、管楽器は総じて後ろにひっこませた結果、とてもスリムで端正なマーラーが浮かび上がっている。この演奏での、両端楽章の弦楽器の粘りは、よく聴いてみるとすさまじいが、それがあざとくないので、どちらかといえば淡白にさえ聴こえる。
ひとりひとりのソリストが、懸命に鳴らせているのが手に取るようにわかる。特に終楽章はそうだ。
1964年といえばカラヤンの全盛期であり、ベルリン・フィルを手中に収めている頃であり、ありあまるパワーを押し付けがましいほどに炸裂させた演奏が多いが、ここでのオケは指揮者の手腕のせいか、巧みに抑制されていて全体のバランスが安定している。カラヤンとの演奏ではいつもうなるようなごつい響きを鳴らせる低弦は、ここでは合奏に自然に溶け込んでいる。
この録音がもしライヴであったならば、様相はだいぶ違ってくるだろう。なんたってバルビローリである。これがスタジオ録音であることで、テンションが中庸に抑えられた結果、こうして演奏後数十年たっても聴き継がれるような完成度になったとも言えるだろう。




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Comment

無題 - miwaplan

こんにちは。御参加、ありがとうございます。

バルビローリとベリリン・フィルの組み合わせで、もっと演奏してほしかったですよね。

次回の「メンデルスゾーン」も、ご縁がありましたら、ぜひどうぞ。
2007.01.15 Mon 22:31 URL [ Edit ]

Re:miwaplanさん、こんばんは。 - 管理人:芳野達司

ベルリン・フィルの企画ということで参加させていただきました、今回も何を取り上げるか悩みました。
結果的に、ディスクの少ないバルビローリということになりましたが、このマーラーはいいですね。聴く毎に味が出てきます。

「メンデルスゾーン」も、楽しみにしております。
2007.01.15 22:40

無題 - mozart1889

吉田さん、おはようございます。
バルビローリのマーラー9番、思い出深い演奏です。速めのテンポで淡泊な感じなんですが、味わい深いです。終楽章は、涙なしには聴けません。
男が背中で泣いている風情。
大切にしていきたい名盤です。
2007.01.16 Tue 09:12 URL [ Edit ]

Re:mozart1889さん、こんばんは。 - 管理人:芳野達司

>終楽章は、涙なしには聴けません。
>男が背中で泣いている風情。
仰るとおりです。全体的にもいいですが、終楽章はとても味わい深く、吸引力があります。男のロマンが色濃くにじみ出ているようです。
1枚組みということもあり、最近では最もよく取り出す「マーラー第九」です。
2007.01.16 21:32

無題 - orooro


こんにちは。
ベルリン・フィルの楽員を唸らせたライブはさぞかし凄かったのでしょう。それは同コンビのライブのマーラー2番、3番、6番を聴くとわかるような気がします。
もっと強烈にバルビローリ節だったのでしょう。
こちらはスタジオ録音で、確かに「中庸に抑えられて」いると思います。


http://www.geocities.jp/furtwanglercdreview/barbi.html#no8
2007.01.16 Tue 11:46 URL [ Edit ]

Re:orooroさん、こんばんは。 - 管理人:芳野達司

>同コンビのライブのマーラー2番、3番、6番を聴くとわかるような気がします。
テスタメントでしたっけ、出ていますね。残念ですが、まだ聴いておりません。シュトゥットガルトとの「第2」は廉価だったので購入しましたが、感情の起伏が凄いものでした。ベルリンとの演奏がこんなテンションだったら、さぞすごいのでしょう。
ベルリン・フィルとの「第九」のライヴを聴きたいものです。
2007.01.16 21:39

無題 - ruiros2019

30年以上前ですが推薦盤の書籍に西村さんという作曲家が、所謂、無人島の一枚はこれで決まりという言い方で推していたのでLP独エレクトローラ2枚組を購入。
終楽章のベルリンフィルの弦楽合奏の厚みある音の束の音響レベルは想像を絶するものでこの感動はCDでは再生不可能であることはかえすがえす残念です。
`72カラヤンのトリスタン全曲やら`60クレンペラーのスコッチ等も同様です。(かくいうわたしもLP再生装置は現有しておりません。)
でも近親のものに不幸があった際には悲愴のアダージョと並んで必ず聴く曲であることに変わりはありません。
2007.09.07 Fri 12:38 [ Edit ]

Re:ruiros2019さん、こんにちは。 - 管理人:芳野達司

コメントありがとうございます。
これは多くの評論家が薦める盤ですね。三浦淳史も絶賛していました。
やはり、終楽章のベルリンフィルの弦楽合奏の厚みある音、これはLPのほうが良さそうですね。
この演奏、最初に聴いたときはよくわからなかったのですが、聴くにつれてだんだん面白くなってきました。いまでは、この曲になくてはならない演奏です。
>`72カラヤンのトリスタン全曲
は聴いていませんが、
`60クレンペラーのスコッチ
は、CDだとあまりよく聴こえません。LPがいいですか。
この終楽章は、葬送の場面によく合いそうな音楽ですね。
2007.09.08 10:29
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